今年の冬は、つい先日まで極寒の日が相次ぎ、記録的な大雪に見舞われた地域も多くありました。奈良でも、お水取りが終わってもなお、3月19日の朝は若草山が白く覆われておりました。ここ数年、日本の四季のバランスは崩れ、春と秋の期間が異常に少なくなってきているように感じます。
その短い春のよき日、久保三左男 奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站同窓会竹柏会会長、松原さおり 同理事、赤松知也 後援会会長のご臨席を賜り、乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站6年度乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站院教育学研究科修了式を挙行できますこと、教職員一同、大変嬉しく思います。
奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站院を修了される54名の皆さん、修了おめでとうございます。あわせて、ご家族やご関係の皆様にも、奈良乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站機構理事長、及び全教職員一同、心よりお祝い申し上げます。
奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站は、明治7年（1874年）、奈良県初の教育伝習所「寧楽書院」として現在の興福寺本坊に設置されたことに始まります。明治7年の奈良県内における小学校就学率は52.7％、翌、明治8年は57.5％と、これは全国のトップクラスであり、それゆえ、この状況に対応すべく教員の養成が喫緊の課題となり、「寧楽書院」が開設されました。以後、150年にわたり、本学は教員養成を担ってきました。
その歴史の中で、乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站院修士課程は昭和58年（1983年）、専門職学位課程（教職乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站院）は平成20年（2008年）に設置され、高度専門職業人としての教員、教育者、教育の立場から社会に貢献できる人材の育成に努めてきました。
「寧楽書院」については、その建築や、そこで行われた当時の教育等、本学乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站2回生の山本隆萬さんが中心となって研究を進め、私もまだ知らなかった貴重な史実や資料を発掘し、『寧楽書院 150年の歩み』としてまとめてくれました。さきほど私が述べた本学の歴史も、一部その研究成果から引用したものです。この歴史研究によって、今と未来を考えることができたのは、私にとって大変嬉しいことで、研究成果が人の思考を豊かにすることをあらためて実感いたしました。
さて、皆さんに求めてきた、本学乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站院のディプロマ?ポリシー（学位授与方針）を、今一度確認しましょう。
専門職学位課程は、
1．教育課題を探求し解決できる研究力と高度な実践力を有していること。
2．自らが掲げた「身に付けたい資質?能力」を獲得していること。
3．専門的知見と実践力を生かし、これからの新しい学校教育を牽引できる高度な実践力を有していること。
修士課程は、
1．伝統文化の持続発展や国際理解教育の発展に貢献する高度な知識?技能、思考力?判断力?表現力
2．伝統文化やその教育、国際理解教育に関わる課題を探求?解決し、それらについて専門性を深めることができる研究力
3．教育の立場から多文化共生社会の実現やSDGsの達成に貢献できる力量
これらを有していること、です。
皆さんにおかれては、これらが身に付いていることが確認できたので、先ほど学位記を授けたところです。
「いや、私はまだ身についていないよ」という方は、どうぞこの修了式の後、学位記をお返しください。
ただ、この力が身に付いたと確認したのは、今日、この時点でのことです。例えば、「教育課題を探求し解決できる研究力と高度な実践力」、「教育の立場から多文化共生社会の実現やSDGsの達成に貢献できる力量」は、これからの皆さんの人生において、仕事や社会貢献を通して、それらを活用していかなければならないものです。厳しいことを申し上げるようですが、学位は、「現時点において、それが期待できる」ということを証明するものにすぎません。言い換えれば、学位は皆さんへのエールです。プレッシャーをかけますが、是非このエール、期待に応えてくれるよう、努力を重ねてください。乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站院の意味、学び続けなければならないことの意味もそこにあります。
では、期待に応えるということはどういうことなのか。学位を出した奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站に恩を返すことですか？
いえ、それは意図的にされなくても、結果として「風の便り」で聞こえてくるようなものでよいのです。
教職に就く皆さんにおいては、子どもを幸せにすること、皆さんが育てる子どもが、やがて幸せな社会を創る担い手となれるよう、力を尽くしてください。修士課程を修了した皆さんは、日本や世界の文化の持続発展と創造、国際協調によって、まずは身近な人々を幸せにすること、これに力を尽くしてください。
さらに、そのためには、どのようなことをしたらよいのか。
私が考える重要な方策の一つは、「対話」だと思っています。対話の重要性は、コロナ禍で学んだはずです。また対話は、異なる価値観や考え方をもつ人が共に話すにより、新たな価値や考え方が生み出されることが「会話」とは異なる点である、と平田オリザ氏は述べています。何気ない会話においても、そうした意識をもち、相手を尊重し、受け入れ、自分との異なりを冷静に判断できれば、新たな発見が得られるかもしれません。また、自分一人で何かをしなければならないというプレッシャーもほぐれ、勇気も湧いてくることでしょう。その時、その会話は「対話」として位置付くものだと思われます。
もう一つは、やはり研究です。ここでいう「研究」とは、学会発表をすることや論文を書くことを目的とするだけではなく、日々の仕事や生活の中で、誤りや矛盾、虚偽はないか、不便や困難なことはないか、もっとこうしたらよくなるのではないか、という、いわゆる「課題の探索?探求」をしようとする眼差しや意識をもつことです。そして、どうしたらその解決が果たせるか、アイデアを手繰り寄せ、試し、試したら丁寧に検証し、そのプロセスと結果を他者に伝え、評価を受けることです。乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站院を修了された皆さんは、もうこのことは経験済みですね。これもまた、乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站院修了生として続けてほしいことの一つです。
今、思い出されるのは、私の乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站院時代のことです。8畳一間の私の下宿（風呂なし、部屋にトイレなし、幅90センチのキッチン。でもピアノはありましたが、そのために実質は4畳半）。その狭い部屋に、ゼミを超えて仲間が集まり、酒を飲みながら語り合い（研究のことばかりでなく「恋バナ」もありましたが）、未明になるとファミリーレストランへ移動し、始発電車を待って解散する、ということを毎週のようにやっておりました。その時、私の下宿はサロンのようでもありました。そこでどのような新たな「知」が生まれたかは覚えていませんが、互いに刺激し合い、励まし合ったことは貴重な経験となっています。
ただ、思い返せば、乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站院修了と同時にその仲間もそれぞれの道に進み、今に至るまでそのようなサロンでの集いが全くなかったことは残念に思っています。仕方がないことなのかもしれませんが、もう少し私の度量が広ければ、私が声をかけて皆を集めることもできたのではないかと、今は後悔しているのです。
LINEやSNSで国境をも超えていつでも繋がっているように見える現代ですが、皆さんにおかれては、乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站院で築いた仲間とは、今後も時折会って、話をすることを期待します。
今、文理融合、総合知、統合知が求められていますが、それは、一人の頭の中においてのことだけではなく、多分野で活躍する様々な人との交流、文字通り「人間」、人と人との間、において実現できるものだと思います。
乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站院時代に出会った仲間は、互いの専門を語り合い、どうすれば世の中がよくなるか、学術的な知見を提供し合って議論ができる仲間です。どうかいつまでもこの出会いを大切にしてください。
そして、奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站院を修了したことを自信とし、身に付けた知識や研究力、教育実践力を発揮し、地域、日本、そして世界の人々と社会のために大いに活躍してください。
最後になりますが、修了生の皆さん、そしてご家族の皆様の健康と幸せが、いつまでも続くこと、そして優しさと、力強さと、協調性を持って、格調高く、歩んでいってくれることを期待し、加えて、今後の奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站の発展のために、「奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站 未来を育む基金」へのご寄付等、ご支援をいただけることをお願いし、修了式学長告辞といたします。
乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站7年3月25日
奈良教育乐竞体育_乐竞体育app下载-官方网站 学長 宮下 俊也
